【バレエの舞台美術の世界】背景や装置、大転換のスタッフワーク | 【自分に向いている仕事】を見つける方法

【バレエの舞台美術の世界】背景や装置、大転換のスタッフワーク

スポンサーリンク
AD

バレエ公演やバレエ教室の発表会を劇場に観に行ったことのある方でも、

なかなか舞台美術やセットに目を向ける人は少ないですよね。

発表会であれば、親は子供の晴れ姿に夢中ですし、

バレエ団の公演などはダンサーに釘付けです。

そうそう背景やセットまで気が回るものではありません。

 

しかし、舞台の裏方スタッフや、

その仕事に興味を持つ人であれば、話は別でしょう。

 

舞台は、さまざまなセクションが力を合わせ、

一つの作品をつくりあげる総合芸術です。

そのなかでも、

作品の世界観を表現するのに欠かせないセクションが、舞台美術です。

 

今回は、バレエの舞台芸術の世界について、

背景や装置、大転換などマニアックな舞台裏をご紹介します。

 

スポンサーリンク

バレエの舞台美術の主役は「背景幕」!日本の古典芸能とバレエの背景幕の違い

バレエの公演では、

舞台美術の半分以上を「背景幕」という専用の幕が担っています。

 

背景幕というと、

歌舞伎や日本舞踊や吉本新喜劇のカラフルな背景幕を想像しがちですが、

バレエの背景幕というのはだいぶ違います。

 

バレエの背景幕と日本舞踊の背景幕の大きな違いは、絵の具の種類です。

 

日本舞踊や歌舞伎で使われる背景幕は、

いわゆる泥絵の具と呼ばれる、「顔料」から作られた絵の具です。

一方で、バレエの背景幕で使われる絵の具は、

「染料」からつくられた絵の具です。

 

染料は、つまりインクと一緒です。

染料と顔料は粒子の大きさが違い、布の繊維への浸透の仕方が違うので、

染料のほうがより透明度の高い絵画を描くことができます

また、染料のほうが布の繊維に染み込んでいるので、

仕上がりの重量もずっと軽くなります。

 

ですので、使用している布の種類にもよりますが、

日本の古典芸能の背景幕より、西洋のバレエの背景幕のほうが断然軽いんですよ。

 

バレエの背景幕の使い方。レンタル~吊り方~幕のサイズ

 

また、バレエの背景幕は、レンタル業者から借りるのが一般的です。

バレエ専門の幕を描いている業者さんがあり、

そこから演目に似合う幕をレンタルする、

という形で発表会や公演は成り立っています。

 

レンタルした幕を、舞台の美術バトンというものに吊ります。

幕の上端には、バトンに結ぶための紐がたくさんついていて、

一つ一つバトンに結び付けていくのです。

非常にアナログです。

 

では、バレエ幕の大きさ、どのぐらいだと思いますか?

劇場の広さもいろいろあるので、

平均的な舞台のサイズに対応できるように、

幅は約20m、高さは10mぐらいあります。

 

日本の古典的な舞台は横に長いので、

歌舞伎や日本舞踊などの幕は高さが5~6mしかありません。

それに比べて海外の舞台は縦長の構造をしているので、

海外からやってきたバレエの幕の高さも高いのです。

 

そのようなサイズの幕は、

テントのように畳んで収納袋に入って運搬されます。

もちろん一人では持てないぐらいの重さです。

 

スポンサーリンク

 

バレエ演出の幅を広げる仕掛け幕「紗幕」とは?白鳥の湖の演出にも

バレエ「白鳥の湖」の有名なシーンで、

黒鳥オデットが王子を騙して王子と踊っている場面で、

後ろに白鳥オディールがもがき苦しむ姿が浮かび上がるという演出があります。

 

この演出を可能にしているのが、「紗幕」とよばれる仕掛け幕の存在です。

 

「紗幕」とは透ける幕のことで、レースカーテンのような役割をします

 

昼間にレースのカーテンをしめたとき、

外のほうが太陽光で明るいので、部屋の中は見えにくくなります。

反対に夜に明かりを点けてレースのカーテンだけをしていた場合、

外より部屋の中のほうが明るいので中がはっきりと見えます。

このように「紗幕」は照明が明るい側だけが見えるふしぎな幕なのです。

 

バレエ公演では、舞台の真ん中ぐらいに、紗幕を吊ります。

幕より前に照明が明るく点いていて、

幕より奥の照明を暗くしておけば、紗幕よりも前しか見えません。

紗幕の奥で人が歩いていても客席からは見えないのです。

 

反対に、舞台前の照明を消して、紗幕より奥の照明だけを付けます。

すると、紗幕ごしに奥を歩いている人が見えるようになります。

 

白鳥の湖では、紗幕の仕掛けをつかった演出が、もがき苦しむ白鳥のシーンで使われます。

 

背景幕は宮殿の絵が描かれています。

大きな窓があり、その窓の部分だけが紗幕(透かし)になっています。

実は白鳥役のダンサーは窓のうしろにずっとスタンバイして立っています。

けれども、幕の奥の照明が消えていて真っ暗なので、姿が見えません。

 

しかし、もがき苦しむ場面になると、

幕の後ろの両サイドから照明がパッと白鳥役のダンサーを照らします。

すると、白鳥の姿が客席からも見えるようになるというわけです。

 

スポンサーリンク

 

バレエ美術の装置と仕掛け。スタッフワークの醍醐味は「大転換」!

 

「くるみ割り人形」では、この紗幕を上手に転換に利用します。

 

くるみ割り人形は、とにかく場面転換が多い作品です。

急に不思議の国のアリスのように、

自分が小さくなったり部屋の家具が大きくなったりします。

クララと王子が一緒に旅立つシーンでは、

雪が降りしきる森を通り過ぎて、お菓子の国へたどりつきます。

 

バレエでは、音楽は止まらずにこの流れを表現するため、

音楽が終わる前に転換も終えなくてはならないのです。

 

そんなときに活躍するのが、紗幕の存在です。

なかには「絵紗」といって

全体が普通の背景幕のように絵が描いてある紗幕もあります。

 

紗幕の前で、王子とクララが通りすぎている光景を見せている間に、

紗幕の奥ではお菓子の国へ大掛かりなセットチェンジを行うことができるのです。

 

バレエのセットチェンジで魅せる、舞台スタッフと照明スタッフの玄人テクニック!

 

ただし、くるみ割り人形の大転換のシーンでは、

スタッフ同士の絶妙なテクニックが必要となります。

 

まず紗幕がゆっくりと降りてくるのを見せます。

ゆっくり降りてきている間に、

王子とクララは踊りながら舞台の前方へ(紗幕より前へ)出てきます。

 

紗幕が下りるにつれて、紗幕より奥の照明もだんだんと暗くしていくことで、

最初は見えていた奥の景色をゆっくりと見えなくします。

紗幕が下り切ったタイミングで奥の照明がゼロになります。

これでお客さんは、この幕が透ける幕だということを認識するのです。

 

このあと、照明がゼロになった直後に、

実は紗幕のすぐ奥の暗幕をしっかりと閉めているのです。

これをすることで、奥の照明を舞台前に漏れないようにし、

奥を明るくして安全な状態で転換を行います。

 

しかし、お客さんには、透ける幕が下りてきたことしか見えていないので、

その後ろに暗幕があるなんて思ってもいません。

 

暗幕の奥で大転換が終わり、お菓子の国の背景に変わりました。

 

転換が終わると、まず奥の照明を真っ暗にします。

次に降ろしていた暗幕をあげます。

でもお客さんにはバレないように静かに上げます。

曲が止まることなく続いているので、

基本的には物音が客席まで聞こえることはありません。

これで、隔てる幕は紗幕1枚になりました。

 

お菓子の国に到着したシーンの曲に合わせて、

先に奥の照明をパッと付けることによって、

紗幕ごしの景色をお客さんに見せるのです。

ガラッと景色が変わっているので、

けっこうなインパクトを観客に与えることができます

 

紗幕ごしに見せたあとに、門をあけるようにしてゆっくりと紗幕を上げていき、

2人がお菓子の国へ入っていくという様子を演出するのです。

 

このように、スタッフワークテクニックは、

タイミングを間違えると台無しです。

舞台スタッフと照明スタッフは、

トランシーバーなどで情報共有することが大事なんですよ。

 

バレエって、幕間の休憩を除いて、一度始まってしまったら止められないのです。

これが演劇でしたら、もし着替えが間に合わない!という場合、

他の役者さんがアドリブのセリフを付け加えて時間を引き延ばすことも可能です。

 

しかし、バレエの場合は音楽が続いているので、

ダンサーの着替えが間に合わなくても、時間稼ぎすることはできないのです。

バレエの転換も同じで、音楽が止まらない限り、

何がなんでも間に合わせなくてはならないのです。

 

逆に、鑑賞する側からしてみれば、音楽やダンサーに集中していたら、

「気付いたらガラっとセットチェンジしていた!わあ、すごい!」ていうのが、

バレエ美術の魅力であり醍醐味でもあるんですよね。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は、バレエの世界観をつくる舞台美術についてのお話でした。

ふだんバレエを鑑賞しながら、

そんな舞台美術や照明やセットチェンジのことなんて

気にしながら観ることなんてないですよね。

このようなマニアックな裏側の世界を知ることで、

バレエを観るのが楽しくなったり、舞台裏方の仕事に興味を持ってもらえたら嬉しいです。

タイトルとURLをコピーしました