バレエ「白鳥の湖」見どころを、元舞台スタッフがおすすめ&徹底解説! | 【自分に向いている仕事】を見つける方法

バレエ「白鳥の湖」見どころを、元舞台スタッフがおすすめ&徹底解説!

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「白鳥の湖」と聞いて、楽曲を知らない人はいないんじゃないか、というほど

「チャーン チャラララ チャーチャ チャーチャ・・・」というメロディは

メジャーで耳に残る名曲ですよね。

 

「バレエ作品は見たことがなくても、チャイコフスキーのこの楽曲は耳なじみがある。」

そんな演目は、初心者でもバレエを楽しめるポイントの一つです。

今回は、バレエの王道といえる白鳥の湖の見どころについて、

元舞台スタッフの著者が詳しく解説していきます!

 

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白鳥の湖見どころは、一人二役のヒロイン!強靭な体力気力とテクニック

白鳥の湖の物語は、非常におとぎ話チックです。

ジークフリート王子は自分の誕生日パーティでもらった弓矢を持ち、

友人と狩りにでかけた湖で白鳥の群れを発見します。

そのうちの一羽の白鳥が、月の光で美しい娘に変わり、

王子はその娘に一目惚れをしてしまうわけです。

 

この娘の名前はオデットといい、

悪魔ロットバルトに捕らわれ呪いをかけられて白鳥の姿になってしまったとのこと。

この悪魔ロットバルトというやつは、いわゆる敵役の親玉です。

 

彼には黒鳥の娘がいて、その名もオディール。

白(王子・白鳥チーム) vs 黒(ロットバルト・黒鳥チーム)

というわかりやすい対立構造なのに、

名前はオデットとオディール。非常に紛らわしいところです。

 

しかも、オデットとオディールは同じダンサーが踊ることが多いのです。

なぜなら、オディールはオデットになりすまして王子をたぶらかすという役柄であるため、

二人は瓜二つである必要があるからなんです。

 

王子は求婚するために白鳥オデットを舞踏会に招待するのですが、

(愛を誓えばオデットは呪いが解けて人間に戻れるらしいのです。)

舞踏会にやってきたのは黒鳥オディールでした。

 

王子はまんまと騙されて、黒鳥オディールに愛を誓ってしまい、

王子は悪魔ロットバルトと闘い勝利するものの、

白鳥オデットとともに湖に身を投げ、悲劇の終演

というのが、おおまかな物語です。

 

バレエでは、とにかくヒロインが死んじゃう話が多いですが、

「白鳥の湖」もその代表的な一つですね。

 

初演のボリショイ劇場では別々のダンサーが踊っていたそうなのですが、

ロシアのマリインスキー・バレエ団の

ピエリ―ナ・レニャーニという人が二役演じきったことから、

それ以後一人二役というのが定着したそうです。

 

しかし、一人二役をやりきるには、強靭な体力気力が求められます。

白鳥オデットの登場は2幕から、

黒鳥オディールが初登場するのは3幕の舞踏会のシーンからです。

 

2幕でオデットとして踊り終わったら、

早着替えをして3幕は黒鳥オディールとして舞台に立ちます。

3幕では32回転くるくると高速でまわる大技を披露したのち、

また着替えて白鳥にもどり、

ラストは白鳥オデットとしてまた踊るのです。

 

鍛錬に鍛錬をかさねたダンサーでも、

二役をこなすというのは非常にハードです。

3幕でオディールが披露するグランフェッテという高速回転技は、

ある意味いちばんの見せ場で、客席が「ブラボー」と拍手で盛り上がるのも醍醐味の一つです。

 

元舞台スタッフがおすすめ白鳥の湖の見どころは、3幕舞踏会シーンの情景

私もこの3幕の舞踏会のシーンが好きなのですが、個人的に好きなポイントをご紹介します。

王子が黒鳥オディールに騙されている真っ最中、

白鳥オデットが、もがき苦しむ情景を描くフレーズがあります

たいていの場合、宮殿の背景幕が急に透けて、

その向こう側に瀕死の白鳥のシルエットが映し出される、という演出をおこないます。

情景が美しいこの作品の中でも、視覚的に映える、ちょっと映画的な演出です。

 

この演出のタネ明かしをしましょう。

背景幕の中には透かし幕(紗幕)と呼ばれるものがあります。

白鳥の湖の場合は、宮殿大広間の奥の大窓部分が透かしになっているものが多いです

透かし幕は、それより手前(客席側)に照明が当たっていて、

幕の奥が暗ければ透けませんが、

幕の奥を照明で照らした途端に透けて幕の向こうが見える仕組みです。

 

このシーンで、白鳥役を演じるダンサーは、

暗闇の中でそろりそろりと高いお立ち台の上にのぼり、

そのフレーズの直前、まだ暗いうちから羽をばたばたさせているんです。

 

フレーズに合わせて舞台のサイドからの照明がカッと付き、その姿が照らし出されます。

そのフレーズが終わって照明が消えるまで、ずっともがき苦しみつづけ、

照明が消えて幕の裏が暗くなると、ダンサーがそろりそろりとお立ち台から降りてきます。

舞台の表で盛り上がっている中で、裏ではこんなシュールなことが行われているんですよ。

 

ぜひ、このシーンを見る機会がありましたら、舞台裏を想像しながらご覧になると、

また一つ、楽しみが増えるのではないかなと思います。

 

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役名まとめて「白鳥たち」 2幕の情景コールドバレエも圧巻。

白鳥の湖では、

月明かりに照らされた夜の湖で白鳥たちが踊るという美しい情景を描く

コールドバレエも見どころの一つです。

 

コールドバレエというのは、大多数のダンサーで構成されたバレエシーンのことで、

美しいフォーメンションやシンクロした動きなどが特徴です

特に白鳥の湖のコールドバレエは、動いているときだけでなく、

静止しているときも非常に美しいのです。

手を前に交差させ、首をくいっと反らせて静止する姿はほんとうに白鳥のように見えます。

 

コールドバレエで有名な演目には他にも、

「ラ・バヤデール」の陰の王国のコールドバレエや、

「ジゼル」2幕のウィリの踊り、くるみ割り人形の「雪の結晶」などがあります。

 

これらは他のコールドバレエと違い、決定的な特徴があります。

  • 衣装が白い
  • 人間じゃない
  • 照明がうすぐらい

この3つなんです、面白いですよね。

 

衣装が白いので、これらのコールドバレエは「白のバレエ」と呼ばれたりします

どれもこれも、妖精だったり、精霊だったり、とにかく人間じゃないのです。

 

そして、うすぐら~いブルーの照明の中で踊られます。

ダンサー一人ひとりの顔なんて見えないぐらいです。

でも、その薄暗いブルーの照明の中で衣装の白が映えて、

非常に幻想的な世界が表現されているので、とにかく見ていて美しいです。

2幕の湖の情景をご覧になるときは、

是非そのようなポイントに注目して見てみてください。

 

また、2幕で有名なバリエーションの一つに、「四羽の白鳥の踊り」があります。

4人のダンサーが手を交差でつないだまま踊ることで手や腕の表現を封じ込め、

徹底的に足の動きとわずかな首の動きだけで勝負する、

という振り付けの特徴的なバリエーションです。

 

この楽曲を有名にしたのは、

なんといっても男性だけのトロカデロ・デ・モンテカルロバレエ団ではないでしょうか。

このバレエ団は、クラシックなバレエ作品をコメディータッチに仕上げることで、

バレエの敷居をさげて誰もが親しみをもって楽しめる作品をつくっている男性バレエ団です。

男性ダンサーが白鳥のチュチュを着てトウシューズを履き、

4人手を交差でつないで踊る映像を目にしたことがある人もいるでしょう。

 

普段トウシューズを履かない男性ダンサーが、

女性のトウシューズを履き、女性の足の動きを表現するのは、

技術的に非常に難しいことなのだそうです。

モンテカルロバレエ団が、その素晴らしい技術と作品で、

この「四羽の白鳥の踊り」という

バリエーションを有名にしたといっても過言ではないと思います。

 

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悲恋の物語だけじゃない。「白鳥の湖」はハッピーエンド版も存在する

 

悲劇の物語をコメディタッチで描く

モンテカルロバレエ団の「白鳥の湖」をご紹介しましたが、

そもそもこの「白鳥の湖」には

『悲劇じゃないバージョン』というのが存在することをご存じでしょうか。

 

「白鳥の湖」というバレエ作品は、

もともとドイツの作家ムゼ―ウスの「奪われたヴェール」という物語を原作として

チャイコフスキーが作曲したものといわれています。

初演は、ロシアのボリショイ劇場で初めて上演されたのですが、

当時はけちょんけちょんに酷評されて人気のない作品だったそうです。

 

時代の流れの中で「自ら身を投げて死んじゃう話はあまりよろしくない」ということで、

ソビエトのロマノフ王朝が終わったぐらいの時期、

ハッピーエンドの「白鳥の湖」が生まれます。

 

王子やオデットや白鳥たちも力を合わせて悪魔・・・

つまりこれは資本主義や王政制度をさすのですが、

「これらの悪をみんなで倒しましょう!」「おお!」

といった政治的な話に作り替えられた時代がありました。

 

そして共産主義国家、ロシアが生まれるわけです。

そんなときに、ニコライ・セルゲイエフという人が、

バレエの譜面や振り付けの記録などをたくさん持ち出して西側に亡命しました。

彼が持ち出したのは、まだ改訂前の悲劇バージョンの「白鳥の湖」だったので、

ヨーロッパにひろく伝わったのは悲劇バージョンなんだそうです。

 

他のバレエ作品の中にも、

解釈が違うバージョンがあったり振り付けが全然違うバージョンがあったりして、

○○版、□□版などと区別して言ったりします

 

著作権などのルールが確立していなかった時代には、けっこうハチャメチャです。

物語を変えてしまったり、

使用する楽曲をいろんな作曲家のいろんな曲をつなぎ合わせて一つのバレエ作品にしたり、

などということが行われているんですよね。

 

作曲家(「白鳥の湖」でいえばチャイコフスキーですが)は、

原作の物語をもとにして一つの音楽を作曲しているわけですから、

勝手に物語を変えられたら憤慨だろうな・・・と思ってしまいますよね。

 

まとめ

 

いかがでしたでしょうか。

「白鳥の湖」を鑑賞するときの注目ポイントや、見どころがたくさんあることがわかりました。

舞台裏のうんちくや、歴史的な背景などちょっと知っていると、

実際の舞台をみるときも楽しみ方が広がるのでは・・・と思っています

ぜひ、いろいろな「白鳥の湖」をご覧になって、バレエの魅力を堪能してもらえたらと思います。

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